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下ノ川原ニ居リマス

名ばかり事務所「オフィス カッケン」から、身の回りのこと、いきもののことなどをメモしてゆきます。

「おしゃれ好きのサギ」でいいのか?

信じられない新聞記事を見かけたのでメモしておく。読売新聞web版、2017年2月14日。

サギのサーちゃん、おしゃれ好き…洋服店に毎日 : 社会 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)
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写真は【ニュース写真】:写真:読売新聞 読売新聞(YOMIURI ONLINE)より

キャッシュ保存ができなかったので、以下に全文を引用する。

 山形県鶴岡市中心街の山王商店街にある紳士用洋服店の店先に、“おしゃれなお客さん”が現れ、人気を集めている。
 胸に蝶ちょうネクタイ、目の後ろには帽子をかぶったような青い模様がある、ダンディーないでたちの野生のサギだ。サギの「サ」をとって、「サーちゃん」の愛称で親しまれている。
 レトロな店構えが特徴の「カジュアルショップ GINYO 827」に、サーちゃんが現れるようになったのは7、8年前。道路をはさんで道の隣を流れる内川の“住人”で、女性店員が店先に集まるトンビに餌をやっていたところ、サーちゃんが交じってきて、そのうち1羽で店先に姿を現すようになった。
 一時は店の中まで入ってきて餌を食べることもあった。今は店内に入ってくることはなくなったが、店内をのぞくようなしぐさで、餌をねだることもあるという。
 店を経営する佐藤勝三さん(75)は「今では毎日のように来てくれるようになった。かわいいね」といとおしそうに見つめていた。
2017年02月14日 10時08分

実際に現場を知っているし、前から嫌だなあと思っていたのだが、まさかこういう「いい話」として取り上げられるとは予想していなかった。
この記事の問題点は大きく2点あると僕は考える。
「野生動物への餌付けを行っている点」と「それを無批判に(むしろ美談として)扱っている点」だ。

1.「野生動物の餌付けを行っている点」について

記事中のサギもトビも野生動物であり、人間のペットではない。野良犬がそこらをうろついていたり、川にばんばん魚を放流していたのが当たり前だった一昔前ならいざ知らず、野良猫に餌をやって近隣住民とのトラブルになったり、外来生物の問題が普通に聞かれるようになった現在において、「自分で飼育していない動物に餌をやること」はいけないことだ。
餌を食べる姿がかわいい、おなかをすかせてかわいそう……そういった感情そのものは否定されるべきではないし、僕も否定するつもりはないが、それと「だから餌をやっていい」かは全く別の話だ。人間として、責任のある関わり方ではないと思う。

2.「餌付けを美談として扱っている点」について

むしろ問題視されるのはこちらだ。
上記1.の「人間が野生動物に餌付けをすべきでない」という前提は、一般論として新聞記者に知っておいてもらいたいと僕は思う。ましてや、現在は秋田県や西日本で鳥インフルエンザが確認されており、県からも注意喚起が行われている。加えて鶴岡市には下池・上池という渡り鳥の中継地が存在し、鳥インフルが発生した場合の被害は非常に大きい。鳥インフルは渡り鳥等が集まる場所での発生・傷病リスクが高く(集団感染の危険がある)、野生鳥類だけでなく養鶏業などにも甚大な被害が発生するため、ハクチョウへの餌まきを中止した――なんていうニュースもある。
例えばこれは青森県の注意喚起。
ハクチョウ等への餌付け自粛について|青森県庁ウェブサイト Aomori Prefectural Government

こんな状況下で、鳥への餌付けを取り上げ、無批判どころか「いとおしそうに見つめていた」なんていい話に仕立て上げようという新聞記者の気が知れない。大手メディアとしてのリスク意識が低すぎる。

メディアの扱う「いきもの系ニュース」の問題点

いきものや野生動物を取り上げたニュースは、たいてい季節のほのぼのニュース枠として扱われることが多い。ネタのない時期でも毎年定期的に話題になるし、取材すれば大抵詳しいひとが教えてくれるから記事にするのも楽なのかもしれない。
ただし、その「詳しいひと」が正しい保証も全くない。新聞記事に登場する”有識者”がとんちんかんなことを言っている例はごまんとある。
これはメディアに限らない話だけれど、いきものに関わる知識が専門分野として扱われていないことを強く危惧している。
今回の記事も、種名の「アオサギ」すら出てこない時点で、書き手が「いきものとしての鳥」に興味がないことが想像できる。いちいち専門家がチェックを入れることが非現実的だということはよくわかるので、社内の科学班の校正を通すとか、最低限のレベルを担保してほしい。